レポート

廃プラスチック類のアンケート調査結果について

調査研究委員会委員長 佐伯雅夫

はじめに

近年、廃棄物の焼却によるダイオキシンの発生が大きな社会問題となり、廃棄物の焼却の是非を問う声が上がってきている。ダイオキシン発生のメカニズムについては徐々に解明されつつあるが、その原因の一つとして塩ビ系を含む廃プラスチックの焼却に起因するといった理由により、廃プラスチックは処理しにくいと敬遠される傾向にある。

しかしながら、最近になって焼却条件および排ガス対策等を考慮することにより塩ビ系のものであってもダイオキシンの発生を抑えることが可能となってきた。廃棄物の焼却はサーマルリサイクル(焼却熱の利用等)ならびに減量化の方法として非常に有効であり、今後リサイクル化に向けてさらに技術研究開発が行われていくものと思われる。一方、廃プラスチックの埋立は処分地の逼迫により今後ますます困難となることが予想される。

容器包装リサイクル法が平成7年に成立し、PETボトルについては平成9年から、再生技術が確立されていないその他のプラスチック製容器等については平成12年4月には完全実施を迎えようとしている。

プラスチック処理促進協会によると平成9年度の廃プラスチックの総排出量は949万トン(使用済製品排出量866万トン、生産加工ロス排出量83万トン)で、そのうち一般廃棄物が478万トン、産業廃棄物が471万トンのほぼ半々で、産業廃棄物についてはサーマルリサイクル(固形燃料、油化/高炉原料、発電付焼却、熱利用焼却)が22%、マテリアルリサイクル(再生利用)が23%で、一方単純焼却が8%、埋立が47%であると報告されている。したがって、産業廃棄物については、有効利用としてのリサイクル率は45%であり、非常に高い数値となっている。

ダイオキシン問題、最終処分場の逼迫さらに容器包装リサイクル法の完全実施を目前としたこの時期において、当協会の会員会社では廃プラスチックをどのような形で処理しているのか、リサイクルに向けてどのような姿勢で取り組みを行っているのか、またリサイクルを進めるうえで問題となっている事柄は何か等を明らかにすることは非常に意義のあることと思われる。そこで、廃プラスチック類のアンケート調査を行った。

アンケート調査

対象としては当協会会員のうち廃プラスチックの中間処理および収集運搬業の許可を持つ482社に対しておこなった。回答数は96社で(このうち取り扱っていないのは50社)であった。

合成高分子化合物の調査結果を表1および図1にしめす。受入量(処理量)はH7~H9年度でほとんど変化がない。埋立についてはH7年度の59.4%がH9年度では44%と大きく減少している。焼却(単純)はH7年度の35.4%がH9年度では43%と増加の傾向にある。これは、最終処分場の逼迫により埋立が減少し、その代わり減量化の手段として焼却を選択したことによるものと思われる。リサイクル(主としてサーマルリサイクル)はH7年度の5.1%がH9年度では13%と著しく増加しており、会社数も6社から10社に増加している。埋立と焼却はH7年度の94.8%がH9年度では87%と減少しており、その差異はリサイクルの増加によることが明らかとなった。

しかしながら、プラスック処理促進協会の報告によるリサイクル率(45%)とはかなり大きな差がある。この原因は、排出先の事業所ではリサイクルが進みつつあるが(とくに生産加工ロス品では98%)、産廃処理業者が取り扱っている廃棄物は処理困難物あるいは他の廃棄物との混合物が多くリサイクルが難しいことに起因するものと思われる。

建設系の調査結果を表2および図2にしめす。受入量はH7~H9年度で11%減少している。埋立はH7年度の62.4%がH9年度では63.3%でほとんど変化がない。これは建設系の場合、とくに分別困難物が多く埋立以外に処理方法がないためと思われる。リサイクル(主としてサーマルリサイクル)は、H7年度の1.5%がH9年度で7.9%と著しく増加しており、会社数も3社から5社に増加している。焼却(単純)はH7年度の35.7%がH9年度では28.6%と減少の傾向にあり、それに伴ってリサイクルが増加していることがわかる。

なお、塗料かすおよびその他のものについてはアンケートの回答数が少ないので(塗料かす:4社、その他:5社)、今回は調査の対象から除いた。

表-1 合成高分子化合物受入量(単位:トン)

図-1 合成高分子化合物受入量(単位:トン)

表-2 建設系受入量(単位:トン)

図-2 建設系受入量(単位:トン)

アンケート意見のまとめ

リサイクルについての内容

(1)建設用骨材、内外壁材、保温材等として利用5件
(2)燃料(破砕などの処理後)として利用4件
(3)再生(廃ポリ容器等)原料として利用1件

リサイクルを阻んでいる原因

(1)混合物から構成されている場合が多く分別できないことが原因
・排出者が分別しない
・建設現場では特に難しい
14件
(2)リサイクル品の使用に対する周辺整備ができていないことによる(品質の問題、バージンとの競合等) 6件
(3)リサイクル施設がない3件
(4)リサイクル品の需要がない1件
(5)量が確保できない1件

その他自由な意見

(1)分別が困難である
3件
(2)企業、自治体、消費者の意識の向上を図ることが必要 3件
(3)リサイクル施設の情報がない2件
(4)リサイクルするにはコストがかかる2件
(5)循環型システムを作ることが重要2件
(6)処理ルートを確立することが必要1件
(7)行政が資金面でバックアップして欲しい1件

最後に

廃プラスチックは、混合物の状態で廃棄される場合が多く(とくに建設系のもの)単一のものを除けば非常にリサイクルするのが難しいとされているが、アンケート結果から見られたように着実にリサイクル化(主としてサーマルリサイクル)の方向に進みつつあることは明らかである。

基本的には廃棄物の発生抑制、使用済み製品の再利用(マテリアルリサイクル)の拡大ならびにケミカル(原燃料化、たとえば油化等)およびサーマルリサイクル(エネルギー回収)を進めていくべきであろう。しかしいずれにしても、行政と共に協力してリサイクル施設の建設を進めることにより、処理ルートの確保を図ることが最も大切であろう。

次にマテリアルリサイクルについては、リサイクルに対する消費者の意識の向上を図ることにより製品が市場に出まわり易くなる環境を作る事が必要となろう(補助金等の問題を含め)。構造的不況のつづくなかで、これまでの大量生産、大量消費の考えが変わろうとしている。地球環境を考え、資源循環型社会の構築を目指すことにより、今後これまでとは変わりリサイクルを考慮した製品が多く市場にでてくるようになる。このような時期であるので私どもの業界においても官民一体となりリサイクル化を図るために一層の努力をすべきであろうと考えられる。